福岡県福岡市を拠点に発行する西日本新聞(にしにっぽんしんぶん) 別ウィンドウで開きます は、新聞業界としては初の、やさしい日本語での情報発信を2018年の11月に開始しました。この取り組みには「伝えるウェブ 別ウィンドウで開きます」(やさしい日本語へのAI機械翻訳システム)をご活用いただいています。
やさしい日本語での情報発信を始めたきっかけ、運用にまつわるお話、システムの導入や活用方法などを編集局 クロスメディア報道部 デスク/記者の福間 慎一様にお伺いしました。
元々は 2016年に「新 移民時代」という特集を連載し始めたことが発端です。
人手不足を背景に、外国人労働者は100万人を突破する見込みとなったにもかかわらず、外国人労働者・外国人が増えているのに彼らがないがしろにされているのではないか、というのが連載のきっかけとなりました。
そこで最初は、外国語・多言語での情報発信を検討していたのですが、負担が大きく、そもそも何ヶ国語をカバーすればいいのかわかりませんでした。
そこで、「新 移民時代」の取材を通して知り合った、電通の吉開さん(2016年「やさしい日本語ツーリズム」企画を柳川市で実現、公私ともにやさしい日本語の社会普及に尽力中)に、「やさしい日本語」での情報発信について教えていただき、取り組もうということになりました。
2018年の11月末に、「新 移民時代」特設ページをオープンし、その後アルファサードの「伝えるウェブ 別ウィンドウで開きます」(やさしい日本語へのAI機械翻訳システム)を導入しました。
こちらも、電通の吉開さんの紹介で、こういう取り組みをしている会社がある、ということで2018年の11月のはじめに吉開さんと一緒にアルファサード東京オフィスを訪問し、システムの説明を受けました。
やさしい日本語への取り組みにおいては、私たちも手探りの状態でしたので、できることであればやってみよう、ということで導入してみようということになりました。
原稿は我々の内製です。当初は試行錯誤でしたが、前述の吉開さんのアドバイスをいただいたりして掲載を開始しました。平日は1日1記事をやさしい日本語化しています。
現在では、累計200記事を超えました。
やさしい日本語化にあたっては、伝えるウェブの「やさしい日本語化支援」機能や、ウェブ上で日本語の「やさしさ」を判定できるツールを活用しています。さらに日本語教師の方に監修をお願いして、質の向上に取り組んでいます。
また、人の手による翻訳作業では対応できる記事に限りがあるため、AIによる自動翻訳へのリンクボタンをウェブサイトに設置しています。
「やさしい日本語」は「難しい」ですが、やりがいのある仕事だと思います。
新聞業界初の取り組みですので、それなりに反響がありました。多かったのは日本語教育関係の方からの反響でした。
現在は、福岡のラジオ局 Love FM 別ウィンドウで開きます(九州北部をカバー)で平日 12:00 から、西日本新聞で作成したやさしい日本語の原稿をニュースとして取り上げていただいていて、ラジオを聞いた方からの反響も増えてきました。
現在、私たちは新聞本紙以外のコンテンツの展開も担っています。ウェブ、ラジオやテレビとのタイアップ企画などを積極的に進めており、様々なメディアにもやさしい日本語を普及させるように取り組んでいます。
その一環として、Love FM へのニュース配信に加えて、2019年の3月から、西日本新聞が発行するフリーペーパー、ファンファン 別ウィンドウで開きます(毎週金曜日発行・約35万部)に1記事ずつやさしい日本語の記事を掲載しています。
AI機械翻訳へはボタンを付ければ自動翻訳してくれるのですが、実際によく利用するのは管理画面の「やさしい日本語言い換え支援」機能です。単語の難易度を可視化してくれたり、ふりがなを自動で付けてくれたり、分かち書きを自動で行ってくれるため、最終的には人の手で原稿へ落とし込むのですが、作業の省力化にとても役立っています。
これは、私達自身の問題でもあるのですが、辞書の充実が必要だと思っていますが、そこについては手が回っていません。
やさしい日本語言い換え支援機能はすでに便利ですが、現在の「原文にふりがな追加」「やさしい日本語化、ふりがな、分かち書き」の変換に加え、「原文にふりがな追加+分かち書き」のモードがあると嬉しいです。
せっかくこのようにやさしい日本語での情報発信を行っているのに、プロモーションが足りていないな、と感じています。
今後も、様々なメディアにやさしい日本語での情報発信を広げていきたいと思います。