導入事例:福岡県古賀市様

「やさしい日本語」・「伝えるウェブ」への理解を深めて、日本一「やさしい」窓口にしたい

福岡県古賀市別ウィンドウで開きます は九州北部に位置し、福岡市に近いことからアクセスのよい交通の要点として発展しています。2022年4月から、市のホームページに「伝えるウェブ」を導入いただきました。

今回はZoomを利用して、まちづくり支援課の渋田様、飯尾様にお話を伺いました。

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古賀市がやさしい日本語への取り組みを始めた、きっかけを教えてください。

2020年4月に国際交流・多文化共生係ができてから今年度で3年目になりました。最初はまったく手探りで、色々な人の声を聞きながら事業を企画してきました。2015年からの5年間で外国人住民がおよそ2倍近くになったこともあり、窓口に外国の方が来る機会が増えたのですが、その中で私たちが課題に感じたことは「外国の方が来たから対応をお願いします」という風に、いろいろな窓口の職員から私たちのところに電話がかかってくることです。

おそらく窓口の職員たちは「そこまで英語がしゃべれないから…」とか、「外国籍の方が来てもどうすれば良いか分からない」と思うようで、もちろん電話を受けた私たちは翻訳機などを持って出動するのですが、いざ話をしてみると、たどたどしくはあっても頑張って日本語で話をしようとしてくださる方がほとんどです。結局のところ、やさしい日本語で通訳をして対応が終わった、という形になります。

これであれば私たちが出ていく必要はなくて、窓口の職員にやさしい日本語の知識と「まずは日本語で優しく話しかける」という意識があれば、「やさしい窓口」になるんじゃないか?と思いました。また「決して、翻訳機を整備することだけが多文化共生ではない」と考えるようになりました。

そこから、やさしい日本語の缶バッジを高校生と作ったり、職員向けの「やさしい日本語講座」を出入国在留管理局に依頼し実施したりと、取り組みを進めてきました。

「伝えるウェブ」導入を決めた理由を教えてください。

新しい係で、ほとんど予算がなかったこともあり「何かないか」とアンテナを張るようにしていました。その中で伝えるウェブの無料キャンペーンの通知が目に飛び込んできて、「とりあえずやってみよう!」「やさしい日本語がこれでうまく出来たらラッキー」という感じで申し込みました。はじめての係で何もないところからスタートしているので、柔軟に動いてみようというスタンスがあった一方、やはり無駄な投資はできないので、無料キャンペーンはありがたかったです。

ホームページをやさしい日本語に変換できることは、「外国の人にもやさしいまちである」という発信になると考えています。

やさしい日本語での情報発信について、体制や運用はどのようにされていますか?

各部署のホームページの担当者がそれぞれいるのですが「課のページをやさしい日本語に変換して、業務の合間に可能な範囲で確認してみてほしい」と呼びかけることから始めました。最初は地名や人名といった固有名詞のルビが、正確に振られているかという確認を依頼したのですが、いくつかの課からは、プラスアルファで言い換えの相談や提案などが寄せられました。辞書にはそのたびに新規登録をしています。 多くの職員が関心を持ってフォローしてくれており、時には私たちが逆に「こうじゃないの?」と周囲に教えられたりして、ありがたいと感じています。

また最近、公文書を実際にやさしい日本語化する機会があったのですがやはり日本語がむずかしく、一からやさしい日本語に作りなおすことは大変だと感じたので、やさしい日本語エディタなどの機能をもっと活用していきたいです。職員の何人かからは「もう少し詳しく機能のことを聞いてみたい」という声もあり、講習のようなこともお願いできればと思っております。

係の発足時と比べて、職員間のやさしい日本語の周知も進んできました。前述の、高校生と一緒に作った「やさしい日本語の缶バッジ」は、職員に配布して名札やポケットなど見える所に付けてもらっています。「外国の方が声をかけやすいように」というねらいがあり、窓口の方はだいたい付けてくれています。認知度はある一定数上がってきたと感じているので、どう活用していくかを考えています。

Zoomのキャプチャ画像:古賀市の「やさしい日本語」缶バッジを見せてもらいました

(実際に、使っている缶バッジを見せていただきました)

古賀市は、田辺市長ご自身も多文化共生の推進に力を入れていますよね。

(田辺市長のTwitter投稿から。職員研修についての情報発信)

やさしい日本語での情報発信についての反響はいかがでしょうか?

私たちの部署では外国人向けの日本語教室も担当しており、何かやさしい日本語の企画をしたときには、実際に見て使ってもらったり、意見を聞いたりしています。伝えるウェブ導入時も、変換前と変換後のホームページを見比べてもらいました。行政用語や漢字が多い通常の日本語ぺージよりは、変換後の方が「これならわかる」と頷いている様子がありました。ただ、言い換えをAI任せにして終わるのではなく、もう1歩踏み込んで、翻訳した後のものをさらに伝わりやすいように人間が手を加えることも必要だと感じています。

また、私たちは多文化共生係でFacebookを運営しているのですが、1つはっきり言えることがあり、それは「やさしい日本語で、古賀市の情報を発信した時」には、明らかにリーチ数が上がるということです。たとえば台風が来たとき、避難所を開設したことをやさしい日本語で投稿したのですが、普段よりもリーチ数が高かったです。 「古賀市から何か情報が来ているな、やさしい日本語なら見てみようかな」と考えてくれる人がいるということです。やさしい日本語は有用だという手ごたえがありますし、こうした情報発信も、もう1歩頑張ってより伝わるようにしていきたいです。

「古賀市まちづくり推進課 国際交流・多文化共生係」のFacebook別ウィンドウで開きます の投稿。台風接近時の情報共有にやさしい日本語を活用。

大型(おおがた)で とても 強(つよ)い 台風(たいふう)第(だい)14号(ごう)は、19日(にち) 朝(あさ)から 昼前(ひるまえ)にかけて 福岡県(ふくおかけん)に 最(もっと)も 近(ちか)づく 見込(みこ)みです。 市(し)では ...

古賀市 まちづくり推進課 国際交流・多文化共生係さんの投稿  2022年9月17日土曜日

「伝えるウェブ」の「ここが便利だ」という点、課題点など

辞書機能について、ある単語をこの部署のページではこう設定したい、別の部署のページではちがう言葉に設定したいという場合がありました。1単語に対して、置き換えを複数パターン設定することは難しいでしょうか?

一例:「額の傷」の「額」は、絵の「がく」か人の「ひたい」か?

変換へのご意見(気になる変換がある、「この語句は変換できた方が良い」など)

伝えるウェブで「児童扶養手当」の説明が出たのは驚きましたが、よく使われる行政用語をカバーしていただけるとありがたいです。 この間、学校教育課の文書をやさしい日本語に変換してみたのですが、「就学援助」が「学校へ入ることの協力」のようになります。文脈によっては「協力」=「勉強を見てもらえる」と取ることもでき、「学校に入るためのお金」のことだと分かるようになればありがたいです。

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皆様の今後の展望・課題を教えてください。

日本人が読んでも難しいような日本語が、まだ行政文書の中にはたくさんあります。これらをいきなり多言語化するのではなく、まずはやさしい日本語にしてみて、国籍に関わらず誰にとってもわかりやすく伝わるような文章にしていくことを考えています。私たちだけでやると膨大な時間がかかってしまうので、伝えるウェブを活用しながら文書のやさしい日本語化を進めるつもりです。

今の展望としては、やさしい日本語を2つの方面で頑張らないといけないと思っています。1つ目は、「やさしい日本語エディタ」を使いこなして、文書を少しずつやさしい日本語にしていくこと。2つ目は、やさしい日本語の啓発です。少しでも職員自身が「何となく」でもコツをつかみやさしい日本語を使いこなせるように、研修を企画することです。AIのやさしい日本語変換は便利ですが、頼りきりになるのではなく「本当にその言い方が伝わるか?」という問いも含んでおかなくては、「日本一やさしい窓口」にはなれないと思っているんです。

やさしい日本語には、相手の立場になって「どんなことが困るんだろう?」とか「この人は、どういうことを本当は言いたいのだろう?」という「思いやりの気持ちを持って外国の人に接してほしい」ということが根底にあると思います。まず「思いやり」があり、その先に一手段としての「やさしい日本語」がある。そして「どのように書けば相手に伝わるか?」と考えることができたときに初めて、「伝えるウェブ」が活きてくるのではないかと。なので「自動翻訳がすべてではない」と考えています。もちろん伝えるウェブは今後フル活用させてもらうのですが、まずは相手の身になって「これで伝わってるかな?」「この言葉のほうがもっと良いよね」という思いやりの気持ちを持つ職員が増えることが大事だと考えています。

古賀市役所 渋田様と飯尾様
古賀市
  • (左)まちづくり支援課 渋田 典子様
  • (右)まちづくり支援課 飯尾 幸恵様

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