導入事例:きずなメール・プロジェクト様

日本に住む外国人の「孤育て」をなくすために、やさしい日本語で情報を広く届けたい

特定非営利活動法人きずなメール・プロジェクト別ウィンドウで開きますが運営する「きずなメール」は、妊婦さんとその家族を支えるため、出産や育児を助ける情報をメールやLINEなどで受け取ることができる無料サービスです。2022年3月1日、国内在住の外国人を支援するために「きずなメール やさしい日本語版」がリリースされました。

「きずなメール やさしい日本語版」のふりがな作成には、アルファサードが開発した伝えるウェブの「やさしい日本語エディタ」をご利用いただきました。今回は、きずなメール・プロジェクトの大島由起雄様とオノヘレ浩子様のお二人に、Zoomを利用してお話を伺いました。

きずなメール・プロジェクトを始められたきっかけを、ぜひ教えてください。

写真:オンライン取材中の大島様
きずなメール・プロジェクト 大島様

大島様:アメリカの洋書で、「The Pregnancy Journal」という胎児の成長を"毎日"紹介した本があり、それがはじまりです。妻が妊娠した時、アメリカの友人からこの本をプレゼントされたことで出会いました。素晴らしい内容だったのですが、その時日本には、胎児の毎日の成長を紹介している本はありませんでした。

私も妻も編集者なのですが、日本のある出版社に「The Pregnancy Journal」の翻訳を提案したら企画が通りました。現在「安心マタニティブック」というロングセラーの本になっています。
※『はじめての妊娠・出産 安心マタニティブック―お腹の赤ちゃんの成長が毎日わかる!』 (永岡書店 ,2006/1/10)

翻訳した本はひとつ形になりましたが、さらにここから着想を得て、自分たちで何かできないかと考えました。たとえば毎日メールで「外の音が聞こえています」「今、光を感じる頃です」とお腹の中の赤ちゃんの成長が配信されたら、楽しいものができるのではないかと。
そして2010年頃に起業しようと思い、「何か社会の役に立つようなものを」と考えながら、現在のきずなメールが出来ていきました。

きずなメールの、やさしい日本語版を作ることになったきっかけはありますか?

大島様:きずなメールを始めた時から、多言語化をしたいという目標がありました。今の時点では英語版があったり、タイ語やタガログ語などにできているのですが、やはり多言語化は大変です。
きずなメールは、自治体の事業として広げる形に軸足が移りましたが、当然、外国人支援を考えたときには多言語化を検討します。しかし、支援が必要な対象者の人数に対して、多言語を用意するコストがかかりすぎてしまうという問題にぶつかってしまっていました。
そんな時、プロジェクトの理事をお願いしている産婦人科の先生が、理事会で「やさしい日本語はどう?」と話題に出してくれました。調べてみると、阪神・淡路大震災をきっかけに必要性が叫ばれたということ、初級の日本語だったら8割の外国人が理解できるというデータなどが出てきました。多言語化するよりも、やさしい日本語の方が理解度・カバー率が高いということが分かり、きずなメールをやさしい日本語で配信することは、団体の役割だと思うようになりました。

イメージ画像:きずなメールをスマートフォンで表示している

「伝えるウェブ」を知ったきっかけは何でしたか?

大島様:「やさしい日本語版 きずなメール」はクラウドファンディングを実施していたのですが、そこへ野田社長から寄付をいただいたことがきっかけです。まったく見ず知らずの状態だったので、野田社長から突然多額の寄付が来たときは正直驚きました。のちに直接御礼をお伝えした際に、野田社長から伝えるウェブを「使ってみませんか」とご提案いただきました。

やさしい日本語での情報発信について反響はございましたか?

ありがたいことに支援を広くいただくことができ、また、きずなメールのルビ振り作業を行うにあたってボランティアを募ったのですが、想像以上に多くの方に集まっていただきました。また、プレスリリースを行った際は、共同通信の記者の方にも取り上げていただきました。
一方で、「やさしい日本語版 きずなメール」の登録者はまだまだ少なく「当事者の在住外国人が情報を知らない」ということを大きな課題として認識しております。作る以上に、知ってもらう方が時間や費用はかかるだろうとある程度予想はしていました。日本社会の側にも、こうした情報発信の必要性についてのコンセンサスはまだまだ不足しているのだと感じています。まずは外国人が多くニーズの高い地域へ、きずなメールへの登録方法を書いたチラシを配布するなどの活動を検討しています。

伝えるウェブはどのように活用しましたか?

大島様:きずなメールの原稿に、読み仮名をつける作業に「やさしい日本語エディタ」を使用しました。漢字の後にカッコ書きでひらがなを書くのですが、自動で生成できるので大活躍でした。

※補足:「伝えるウェブ」には、漢字の上につけるふりがなの他、漢字の後にカッコつきの読み仮名を自動付与する機能があります。

画像:ルビの設定変更画面
画像:伝えるウェブのエディタの、カッコ書きの様子

50名近くのボランティアの方々がこの作業をしたのですが、使い方も直感的で簡単なので、大変助かりました。メンバーのITリテラシーにはばらつきがあったはずですが、使用方法について特に質問が出ることもなく、スムーズに作業を進めることができました。

誤変換もあると思いますが、どうお感じになりますか?

写真:オンライン取材中のオノヘレ様
きずなメール・プロジェクト オノヘレ様

オノヘレ様:はっきり「誤り」というようなものは特にありませんが、日付「1月3日」などの算用数字のふりがなが「みっか」ではなく「にち」になる場合がありました。これは作業をしてみて分かったことですが、きずなメールの性質上どうしても日付が多く出てくるので、チェックする作業は必要でした。

ご要望などはありますでしょうか。

オノヘレ様:ふりがなや分かち書きを付ける作業を初めて行うボランティアの方もいたので、「ふりがなを直していいのかな?」「分かち書きってこれで合ってるのかな?」という質問が多く、初心者向けの実例や用語集みたいなものがあると良いと思いました。

一方で、操作自体は分かりやすいので助かりました。私はチラシの作成をしたので、ルビ振りの機能以外に変換機能も使いましたが、文章の切り方なども提案してくれるので、大変助かりました。

皆様の今後の展望・課題がありましたら教えてください。

大島様:2020年に、ベトナム人の技能実習生の方が妊娠したことを誰にも言えないまま双子を死産してしまう、という痛ましい事件がありました。日本も文明国である以上は、こういう方たちをサポートすることはミッションであるはずです。
当事者にいかに広げていくかということに加え、社会的にどう必要性を認知してもらうか、理解を広めて協力者を得ていくということを、ブレずに続けていければと思っています。

特定非営利活動法人 きずなメール・プロジェクト
  • きずなメール・プロジェクト 代表理事 大島由起雄様
  • きずなメール・プロジェクト ディレクター オノヘレ浩子様

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