「NPO法人 発達サポートネット バオバブの樹」別ウィンドウで開きます様は、ホームページ・刊行物の作成等のために2025年10月現在、「伝えるウェブ」をお試しいただいています。
今回は、バオバブの樹の沖村様、小野田様にオンラインでお話を伺いました。
沖村様:バオバブの樹は、神奈川県茅ヶ崎市で発達性ディスレクシア+αな特性をお持ちの方に対して、言語聴覚士の沖村を中心に、当事者の保護者の方、バオバブで大きくなった当事者の若者たちが力を合わせて様々なサービスを提供している団体です。私たちバオバブの樹のように、発達性の読み書きの苦手さにフォーカスした活動をする組織は足りておらず、読み書きの苦手さに悩む全国の子どもたちは十分な支援につながれないという現状があります。バオバブの樹には、茅ヶ崎市だけでなく神奈川県全域や東京都内からも子どもたちがいらしています。
沖村様:「やさしい日本語」は外国の方のために考えられたものですので、一般的に考えられている言語聴覚士の治療的介入と「やさしい日本語」を使うことは方向性が違ってるように思われるかもしれませんが、やさしい日本語のシンプルさ、わかりやすさは当事者の方にとって非常に助かるものだと思います。私は常々、個人モデルで考えることに疑問を感じていて、情報アクセシビリティが保障されていない学校や社会は変わらねばならないと思っています。障害を社会モデルで捉えたときに、社会に「やさしい日本語」が用意されていることに大きな意味があると思っています。
補足 個人モデルと社会モデル
障害の捉え方には大きく分けて「個人モデル(医学モデル)」と「社会モデル」があります。
「個人モデル(医学モデル)」とは、「障害は個人の側にある」と捉える立場です。一方「社会モデル」とは「障害は社会や環境の側にある」と捉える立場のことです。
例えば発達性ディスレクシアの当事者の方に対して「漢字を読む練習をしてもらおう」などのように考えることは、個人モデルの立場です。一方、「ルビのあるやさしい日本語を用意しよう」と考えることは、社会モデルの立場ということができます。
参考: リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」- 内閣府別ウィンドウで開きます
沖村様:もともと「やさしい日本語」のことは知っていましたが、伝えるウェブのことは吉開章さん(やさしい日本語普及連絡会)のお話で知りました。言語聴覚士の啓発を目的としたイベントがあり、そこでお会いした時に「たくさんの資料にいっぺんにルビを振れる方法を知りませんか?」と相談したところ「アルファサード社の伝えるウェブが良いですよ」とご紹介いただきました。
小野田様:公式サイトに実装させていただいたほか、「やさしい日本語エディタ」を利用して会報を年3回、ルビ入りで作成して発行しています。
沖村様:公式サイトにルビ振りを実装した際は、当事者の何人かから「ほっとした」と言われました。普段ルビの重要性を主張しているので、「サイトにルビがないのはおかしい」という思いがみんなの中にありました。
小野田様:エディタのルビ振り機能ですね。①漢字にのみルビが振られる。②ルビ振りの精度が高く、修正が少なくて済む。といった点からWordよりも優秀と感じています。
沖村様:とても重要です。ルビのあるものがもっと増えてほしいと思います。漢字もそうですが、実は発達性ディスレクシアの子どもたち、若者たちは「ほぼ確実に」と言っていいほど英語の学習に苦戦します。漢字の読みが苦手というのはよく言われると思います。ひらがな・カタカナは文字と音が1対1対応である一方、複数の読み方がある漢字では難度が跳ね上がります。英語はさらに不規則性が高く、ローマ字の法則とも大きく読み方が変わるため、英単語を音に変換できないことが多いのです。
方法の一つとして、英単語に「school」などとカタカナで(人によってはひらがなで)ルビを振るというものがあります。ルビがあることで音に変換でき、意味に繋げることができるのです。英語教育を専門にされる方からすると抵抗があるかもしれませんが、今年10月の「発達性ディスレクシアデイ」のイベントを視聴してくださった中学の英語の先生は実情を理解したうえで、大変関心を持たれていました。ただ「部活や業務をやりながら英語にルビを振る時間を捻出するのは厳しい」と率直に話しておられました。現在の体制は先生方の善意にすごく依存していると感じます。より効率のいいルビ振りのシステムの導入が必要なのだと思います。英語へのルビ振り機能も、アルファサードさんにぜひ実現していただきたいです。
小野田様:漢字の「方」のルビが「かた」になるか「ほう」になるか正確でないことがありますね。ただ、基本的にはほぼ気にならないです。
小野田様:安価なプランがほしいです。私たちとしても、年3回の会報のためにそこまで予算を取ることが難しいというのがあり、すぐに契約できないという状況がありました。無料キャンペーンで試用させていただき大変助かりましたが、こうした課題はどの支援団体も持っていると思います。
沖村様:発達性ディスレクシアの若者が去年専門学校に進学しまして、最近話を聞いたのですが、その学校は全ての配布物や掲示物にルビがあって助かっているそうです。これは増えてきた留学生に配慮したものだそうで、その子は「留学生がいてよかった」と話していました。日本人の当事者の方をはじめ、漢字へのルビが必要な人は実は多いのだと感じます。当たり前に漢字にルビがある世の中になれば、助かる人がたくさんいるはずです。伝えるウェブも個人で気軽に使える契約があると、もっと世の中にルビ振りのされた文章が増えるんじゃないかと思います。